☆くちづけ☆

「くちづけ」


それは

貴女に違いなかった

少しずつ 貴女に近付く僕は

切なく震える鼓動に気付く

紗羅が目覚めてしまわないように

でも 貴女が その場所から消えてしまわないうちに

貴女に近付くにつれ

頬を雨のひとすじが

温かい涙と交じって伝う

初めて出会ったひとなのに

こんなにも 貴女が愛おしい

白い傘の中の貴女が

何かを抱きしめていた


僕は

さらに貴女に近づき

次の瞬間

そのくちびるに

そっと くちびるを重ねてしまっていた

貴女はためらうことなく

その柔らかく

でも冷たいくちびるで

僕を迎えてくれた…

「どうしてここにいるの?」

「紗羅ちゃんが濡れていると思って…」

くちびるが離れたら

そんな会話をするんだろうか

そっと 瞼を開けると

目の前の閉じられた

貴女のその瞼の下から

流れ落ちる雫が見えた

僕はその雫に

震える指で

触れていた…


by 花亀




《「ミスト・レイン」と言うカテゴリでストーリー・ポエムを載せています

ここで 1ストーリーが終わります》



★白い傘★

「白い傘」

貴女と出会った場所へ

僕の足は引き返していた


少し震える 紗羅を

胸の中に抱きながら


もう どのくらい 経ったのだろう

貴女がいる筈はないとわかっていても

僕は貴女と出会った場所へ

僕の胸の中で 紗羅は

温もりを取り戻し

深い眠りについてしまった


何故 こうして あの場所を

目指して歩いているのだろう

貴女がそこにいる筈はないのに

もう一度 貴女の

微笑む 瞳に 会いたくて…


そして 僕は気付くんだ


貴女と出会った その場所に

霧雨の中

白い傘が

そっと 佇んでいたんだ



 by 花亀



★落胆★

「落胆」

紗羅を捜す僕が

貴女から少しずつ遠ざかる

貴女に思いを残しながら

広いこの場所を

貴女からどんどん

遠ざかっていく

紗羅はどこへ行ってしまったんだろう

どこを捜しても見つからない


時が

時が過ぎていく

霧雨が僕の体を

少しずつ

冷たくしていく

貴女は

きっと もう

あの場所にはいないだろう

そこには

驚くほど落胆する自分がいた

その時

目の前に

紗羅が

無邪気な顔を見せた…



 by花亀



★悪戯★

「悪戯」

紗羅は僕には従順で

とても大人しい犬だった

いつも公園ではリードを外し

それでも大丈夫な筈だった


突然  紗羅が

走り出す

僕の心を見透かすように

貴女に思いを残しながら

僕は紗羅の後を追う


振り向いて

貴女の瞳を確かめる

それが精一杯の僕だった


そして

その瞳は

微笑んで見えたんだ…

  
  
 by 花亀



★そして貴女と初めての言葉を交わす★


「そして貴女と初めての言葉を交わす」


「…こんにちは」

「こんにちは」

「紗羅!」

「貴方の彼女なのね?」

「そうです。ごめんなさい、驚かせてしまって…でも不思議なんです。僕以外の人には誰にも懐かないのに」

「まあ!それは光栄だわ ありがとう紗羅ちゃん」

……

僕は初めて会う年上の女性と こんなにも簡単に話すことができてしまった自分に驚いた

そしてそれは まるで あらかじめ用意されたていた台本の台詞を読んでいるかのようだった…



 by 花亀



★居場所★

「居場所」

ひとりになると 広すぎる部屋

いつまで経っても

馴染めない部屋

心地いい居場所を求めて

今日もここへ来てしまう

少しの肌寒さも

私にはお似合い

ありふれた雑音も

私には嬉しい

もう少し

もう少しだけ降ってこないで

急に立ち込め始めた靄が

やがて 霧雨へと変わっていく

幻想の景色の中

ふと 足元に優しい気配


可愛い子犬がいた

そして


貴方と出会った…



 by花亀



★紗羅★


「紗羅」


紗羅は僕以外

誰にも懐かない

だから 散歩は夜中になったりする

すっかり夜型になった彼女は

昼間 まどろむ事が多くなってしまった

そんな紗羅が珍しく

午後の散歩をせがんだ

仕方なく出かける

空は今にも泣きそうなのに

僕は出かけた

まるで

貴女に引き寄せられるかのように…


紗羅は迷いなく

歩く

僕を急かすように


そして 彼女は

まるで そこが行きつけの場所のように

彼女にとって 懐かしい場所であるかのように


貴女がそこにいた



公園の片隅

朽ちたテーブルでタイプする

貴女の横顔に

僕は出会ってしまった


そして悲しい恋が始まってしまう…


 by 花亀




★ミスト・レイン★


「ミスト・レイン」


柔らかな霧雨の中で

僕は貴女に出会った

あの日 2人が出会わなければ

こんな残酷な今などありはしなかっただろう

僕が貴女を愛し

貴女は僕に応えてくれた

どんなに高く伸ばしたこの手に

届く筈ない貴女だったのに

振り向いて

微笑んで

僕を抱きしめてくれた

ミスト・レイン

この頬を 貴女への愛が伝うよ

ミスト・レイン

それは

赤く切ない血の色となって

ミスト・レイン

それは悲劇の幕開け


ミスト・レイン

柔らかな霧雨の中

僕は貴女に出会ってしまった…


 by 花亀



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